MLM(マルチレベルマーケティング)は、現代ビジネスにおいて注目される販売手法の一つですが、その運営には特定商取引法による厳格な規制が存在します。近年、消費者トラブルの増加を受けて規制が強化される一方、適切に運営される合法的なMLMビジネスも数多く存在しています。
本記事では、MLMと特定商取引法の関係性から具体的な規制内容、事業者・消費者それぞれが知っておくべき重要ポイントまで、2025年最新の情報を基に包括的に解説します。
事業者・消費者ともに役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
MLM(連鎖販売取引)と特定商取引法の基礎知識

ここでは、MLMが法律上どのように定義され、他の類似するビジネスモデルとどのように区別されるのか、その基礎知識を解説します。特定商取引法における「連鎖販売取引」の要件や、混同されやすい用語の関係性を理解することは、このビジネス形態を正しく認識する上で不可欠です。
連鎖販売取引の法的定義と4つの要件
特定商取引法第33条では、「連鎖販売業」を以下の4つの要件を満たす事業として定義しています。これらの要件をすべて満たす場合、特定商取引法上の「連鎖販売取引」として規制対象となります。
- 物品の販売等の事業: 商品や役務(サービス)の販売・提供を行う事業であること。例えば、健康食品、化粧品、語学教材、会員制サービスなどが該当します。
- 再販売等の条件: 再販売、受託販売、販売あっせん(紹介)を行う者を対象とすること。つまり、単に商品を消費者に販売するだけでなく、さらに第三者に販売する権利や、販売に関わる活動を促すことが含まれます。
- 特定利益の誘引: 「利益が得られる」として勧誘すること。例えば、「このビジネスに参加すれば高収入が得られる」「簡単に稼げる」といった、金銭的なメリットを強調して参加を促すケースです。
- 特定負担の存在: 取引のために1円以上の金銭負担があること。入会金、商品購入費用、研修費用など、ビジネスを開始するために何らかの費用を参加者が支払う場合がこれに該当します。具体的には、「この会に入会すると売値の3割引で商品を買えるので、他人を誘ってその人に売れば儲かります」「他の人を勧誘して入会させると1万円の紹介料がもらえます」といった勧誘が該当します。
連鎖販売取引の4要件判定フローチャート
商品・役務の販売を行っているか?
再販売・受託販売・販売あっせんを行うか?
「利益が得られる」として勧誘しているか?
1円以上の金銭負担があるか?
↓
連鎖販売取引
特定商取引法の規制対象
↓
通常の販売業
規制対象外
MLM、マルチ商法、ネットワークビジネスの関係性
これらの用語は混同されがちですが、実際には以下のような関係性があります。特定商取引法では、これらすべてを「連鎖販売取引」として統一して規制しています。
- MLM(Multi-Level Marketing): 英語での正式名称であり、複数階層の報酬体系を持つマーケティング手法を指します。
- マルチ商法: 日本での一般的な俗称であり、しばしば否定的なニュアンスで使われることがあります。
- ネットワークビジネス: 業界関係者が好んで使う呼称で、ビジネスモデルの健全性や人間関係のネットワークを強調する際に用いられます。
- 連鎖販売取引: 特定商取引法上の正式な法律用語であり、法的な規制の対象となるビジネス形態を指します。
特定商取引法による規制の目的と背景
特定商取引法がMLMを規制する主な目的は消費者保護です。MLMの特性上、以下のような問題が発生しやすいため、トラブルを未然に防ぎ、消費者を保護するために詳細な規制が設けられています。
- 組織構造の限界: ピラミッド型組織は無限に拡大することはできず、後から参加した者ほど利益を得にくくなるという物理的限界があります。これにより、多くの参加者が損失を被るリスクがあります。
- 過度な勧誘: 利益追求のために、友人・知人への無理な勧誘や、人間関係を悪用した勧誘が発生しやすい傾向があります。これにより、人間関係の破綻や精神的苦痛が生じることがあります。
- 誇大広告: 「簡単に稼げる」「必ず利益が出る」といった、実態と異なる虚偽的または誇大な宣伝が行われ、消費者が誤解して契約するリスクがあります。
- 高額負担: 参加時に高額な商品購入や入会金の支払いを要求されることがあり、これが新たな借金につながるなど、消費者の経済的負担となる場合があります。
MLMとねずみ講との決定的な違いと判断基準
MLMと混同されやすいものに「ねずみ講」がありますが、これらは法律上全く異なるものです。ここでは、両者の決定的な違いと、グレーゾーンのビジネスを見分けるための判断基準を詳しく解説します。
商品価値の有無による区別
MLM(連鎖販売取引)とねずみ講(無限連鎖講)の最も重要な違いは「商品価値の有無」です。
- 連鎖販売取引(合法)
- 実際に価値のある商品・サービスの販売が主目的であり、その売買によって利益を得ることが基本です。
- 商品の価格が市場価格と大きくかけ離れておらず、適正な価格設定がされています。
- 販売活動により正当な利益を得ることが可能であり、新規会員の勧誘がなくても事業が成立しうる構造です。
- 無限連鎖講(違法)
- 金品の受け渡しが主目的であり、商品の有無は形式的、または商品があっても価値がほとんどありません。
- 商品があったとしても、その価格と価値が大きくかけ離れており、高額な購入を強いられるケースがほとんどです。
- 新規会員の勧誘による金銭の分配が主な収入源であり、参加者が増え続けることを前提とした破綻しやすい構造です。
適用法律の違い
両者は適用される法律も異なります。
- 連鎖販売取引: 特定商取引法により規制されています。この法律の下で厳格な規制を受けながらも、合法的に運営されるビジネスです。
- 無限連鎖講: 無限連鎖講防止法により全面禁止されており、その活動は犯罪として扱われます。
グレーゾーン案件の判断ポイント
実際のビジネスでは、両者の境界が曖昧な場合があります。判断の際は以下のポイントが重要です。
- 商品の実質的価値: 販売価格に見合う実質的な価値(品質、機能、市場性など)が本当にあるのか、客観的に評価しましょう。
- 収益構造: 商品販売による収益と、新規勧誘による収益(紹介料、ボーナスなど)のバランスを確認してください。勧誘による収益が過度に大きい場合は注意が必要です。
- 継続可能性: 新規勧誘に依存せず、商品やサービスの販売だけで事業が継続可能であるかを見極めましょう。新規勧誘が止まると崩壊するモデルは危険です。
- 社会的有用性: 提供する商品・サービスに、本当に社会的な意義や需要があるのかを検討しましょう。名ばかりの商品や誰も必要としないサービスは疑わしいです。
MLM事業者が遵守すべき特定商取引法の規制内容

MLM事業者は、消費者を保護するために特定商取引法によって様々な義務と規制が課せられています。これらの規制を理解し、遵守することは、合法的に事業を継続するための最低条件です。
氏名等明示義務の具体的要件
連鎖販売取引を行う事業者は、勧誘に先立って以下の事項を消費者に明示する義務があります(法第33条の2)。これを怠ると「目隠し商法」として処分対象となります。近年、SNSやマッチングアプリを利用した勧誘で、この義務違反が多発しています。
- 事業者の氏名・名称: 統括者(事業者)、勧誘者、一般連鎖販売業者の氏名または名称を正確に伝える必要があります。法人の場合は代表者氏名も含まれます。
- 勧誘目的の明示: 特定負担(金銭的な負担)を伴う取引の契約締結が目的であることを、明確に告げなければなりません。「ビジネスの話」「投資の話」といった曖昧な表現で誘い出すことは禁止されています。
- 商品・役務の種類: 具体的な商品名やサービス内容を説明し、消費者がどのような取引を検討するのかを理解できるようにする必要があります。
禁止される勧誘行為と罰則
特定商取引法第34条では、消費者の判断を誤らせたり、困惑させたりする以下の行為を明確に禁止しています。これらの違反には厳しい罰則が科せられます。
- 不実告知・重要事実不告知
- 商品の品質・性能、特定利益(収入の見込み)について嘘をつくこと。例えば「このサプリメントを飲めば必ず病気が治る」「絶対に月に100万円稼げる」といった虚偽の説明です。
- 契約解除の条件や、参加することで生じるリスクなどの重要事項を故意に告げないこと。
- 威迫・困惑
- 消費者を威圧したり、恐怖心を煽ったりして契約を迫ること。
- 長時間の勧誘や、深夜に及ぶ勧誘などで消費者を困惑させ、正常な判断を妨げる行為。
- 不適切な場所での勧誘:勧誘目的を告げずに誘った消費者に対し、喫茶店や公共の場ではなく、密室や公衆の出入りしない場所(自宅など)で勧誘すること。
- 罰則: これらの禁止行為を行った場合、行政処分や刑事罰の対象となります。
- 行政処分: 業務改善指示(勧誘方法の改善命令など)、取引停止命令(6か月から2年間の事業活動停止)、役員等の業務禁止命令などがあります。
- 刑事罰: 最悪の場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
広告表示に関する規制
MLM事業者の広告(ウェブサイト、パンフレット、SNS投稿など)には厳格な規制があります(法第35条、第36条)。消費者が正確な情報を得られるよう、必要な情報を明示し、誇大・虚偽の表示は禁止されています。
- 必要記載事項
- 商品・役務の種類、性質、販売条件。
- 特定負担に関する事項(初期費用、商品購入費用など)。
- 特定利益の計算方法(利益を謳う場合、その算出根拠や条件)。
- 事業者の氏名・名称、住所、電話番号、法人の場合は代表者名。
- 禁止事項
- 誇大広告・誤認を招く表示:「必ず利益が出る」「簡単に稼げる」などの断定的判断の提供や、実態と著しく異なる虚偽の表示。
書面交付義務(概要書面・契約書面)
MLM事業者は、契約に際して2種類の書面を消費者に交付する法的義務があります。これらの書面交付を怠ると行政処分の対象となり、消費者のクーリングオフ期間も進行しません。
- 概要書面(契約前)
- 契約を締結する前に、事業の概要を記載した書面を消費者に交付しなければなりません。
- 統括者の情報、商品情報、特定利益・特定負担の詳細、契約解除の条件、禁止行為に関する事項などが含まれます。
- 契約書面(契約後)
- 契約締結後、遅滞なく契約内容を明記した書面を交付する必要があります。
- クーリングオフに関する事項は、消費者が見落とさないよう、赤枠・赤字で記載し、文字サイズは8ポイント以上にする義務があります。
電子メール広告の規制(オプトイン)
MLM事業者による電子メール広告は、原則として消費者の事前承諾なしに送信することは禁止されています(オプトイン規制)。
- 規制内容
- 消費者の事前承諾(オプトイン)なしに広告メールを送信することは禁止されています。
- 承諾の記録を3年間保存する義務があります。
- メール本文中に、いつでも配信を停止できる手段(例:配信停止リンク)を明示する義務があります。
- 例外的に許可される場合
- 既に契約関係にある消費者への、契約関連の通知に付随する広告。
- 消費者が事前に承諾を得て購読しているメルマガに含まれる広告。
- フリーメールサービスに付随する、サービス提供者からの広告(MLM事業者が直接送信するものではない場合)。
MLM事業者法令遵守チェックリストです。各項目にチェックすると完了率を確認できます。MLM利用検討中の方も、該当企業が法令を遵守しているかどうかのチェックにご利用いただけます。WEB上でチェックできますのでご活用ください。
MLMにおける消費者保護規定の詳細解説

MLM取引において、消費者が不利益を被らないように、特定商取引法では強力な保護規定が設けられています。ここでは、クーリングオフ、中途解約、取消権といった、消費者が自身の権利を行使するための具体的な方法を解説します。
クーリングオフ制度の適用条件
MLMにおけるクーリングオフは、消費者が冷静に判断し直すための重要な制度です(法第40条)。特定の期間内であれば、無条件で契約を解除できます。
- 適用期間
- 法定書面(概要書面と契約書面)の受領日から20日間です。
- もし商品が後日引き渡される場合、書面受領日または商品引渡し日のいずれか遅い方から20日間となります。
- 適用対象
- 無店舗個人(店舗を持たない個人事業主や、法人以外の個人消費者)が対象です。
- 特定負担(1円以上の金銭負担)を伴う連鎖販売契約に適用されます。
- 行使方法
- 書面または電磁的記録(電子メールなど)による通知が必要です。
- 証拠を残すため、特定記録郵便や内容証明郵便の利用が強く推奨されます。電子メールの場合も、送信記録(送信日時、送信内容)を保存しておく必要があります。
- 効果
- クーリングオフが適用されると、契約は無条件で解除されます。
- 消費者は損害賠償や違約金の支払いを求められることはありません。
- 商品の引取り費用は、事業者の負担となります。
中途解約・返品ルールの活用法
クーリングオフ期間が過ぎてしまった場合でも、以下の条件を満たせば契約解除や商品返品が可能です(法第40条の2)。これは、一定期間内の消費者保護を継続する目的で設けられています。
- 中途解約の条件
- 入会後1年以内であること。
- 商品引渡しから90日以内であること。
- 商品を再販売していないこと。
- 商品を使用・消費していないこと(一部例外あり)。
- 自己の責任により商品を滅失・毀損していないこと。
- 返品可能な範囲
- 原則として未使用・未開封の商品が対象です。
- 第三者に転売していない商品である必要があります。
- ただし、事業者が消費者に対して「消費・使用すべき」と指示した商品など、特定の状況では使用済みでも返品が認められる場合があります。
- 手続きのポイント
- 解約通知は書面で行うことが望ましいです。
- 商品の保管状態に注意し、返送時には適切な梱包を心がけてください。
- 返品送料は、原則として消費者負担となる場合があります。
取消権の行使要件と手続き
事業者の法律違反があった場合、消費者には契約を取り消す権利が認められています(法第40条の3)。これは、クーリングオフや中途解約とは異なり、事業者の違法行為を理由とするものです。
- 取消事由
- 事業者が事実と異なる説明をした場合(虚偽の説明)。
- 重要事実(契約に影響する重要な情報)を故意に告げなかった場合。
- これらの行為により、消費者が誤認して契約した場合。
- 行使期間
- 誤認に気づいた時から1年間です。
- ただし、契約締結時から5年間が経過すると、取消権を行使できなくなります(除斥期間)。
- 効果
- 契約は遡及的に無効となります。つまり、契約が最初から存在しなかったものとみなされます。
- 双方に原状回復義務が発生し、受け取った金品や商品を返還する義務が生じます。
- 事業者は、取消により消費者が被った損害に対して賠償請求権を行使することができます(ただし、通常は消費者が優位です)。
MLMの最新の法改正と行政処分事例

特定商取引法は、消費者トラブルの実態に合わせて常に改正が行われています。ここでは、近年行われた法改正の主要ポイントと、実際にMLM事業者が受けた行政処分事例を通して、現在の規制動向を解説します。
令和3年改正の主要ポイント
令和3年(2021年)の特定商取引法改正では、MLM規制も強化されました。これは、インターネットを活用した新たな勧誘手口への対応や、法執行の実効性向上を目的としています。
- 通信販売の詐欺的定期購入対策
- オンラインでの契約において、最終確認画面で定期購入であること、契約期間、総額、解約条件などの重要事項を明確に表示する義務が課せられました。
- 不当なキャンセル料に関する情報提供義務も強化されています。
- 法執行の実効性向上
- 行政処分の公表制度が充実し、違反した事業者の情報がより広範に開示されるようになりました。
- 事業者の所在が不明な場合でも、公示送達(官報などへの掲載による通知)を導入することで、行政処分をより確実に執行できるようになりました。
- 消費者被害の拡大防止
- 適格消費者団体(消費者団体訴訟制度における訴訟主体)による差止請求権が拡大され、不当な勧誘や広告に対する差止請求の範囲が広がりました。
- 不当な広告への対応が強化され、行政庁がより迅速に介入できるようになりました。
近年の違反事例と処分内容
実際に発生した違反事例から、どのような行為が特定商取引法に抵触し、どのような処分が下されているのかを見ていきましょう。
- 日本アムウェイ合同会社(2024年12月)
- 処分内容:新規勧誘業務停止命令(9か月間)。
- 違反内容:SNSやマッチングアプリを利用した「目隠し勧誘」(勧誘目的を告げずに呼び出す行為)や、製品の効果効能について「不実告知」(虚偽の説明)を行ったことが問題視されました。
- 某健康食品MLM企業(2023年)
- 処分内容:取引停止命令(1年間)。
- 違反内容:健康食品の効果効能について医学的根拠のない「誇大広告」を行ったことや、概要書面・契約書面の「書面交付義務違反」が指摘されました。
- 某化粧品MLM企業(2023年)
- 処分内容:業務改善指示。
- 違反内容:特定利益(収入の見込み)について「誇大説明」を行ったことや、勧誘時に消費者を「威迫・困惑」させた行為が問題視されました。
- 処分の傾向
- SNS・マッチングアプリを利用した目隠し勧誘: 友人・知人からの誘いだけでなく、インターネット上の新たな出会い系ツールを悪用した勧誘に対する厳格な対応が目立ちます。
- 効果効能の誇大広告: 健康食品や化粧品において、科学的根拠のない効果を謳う広告に対する処分が強化されています。
- コロナ禍での在宅ワーク需要を悪用した勧誘: 「簡単に稼げる」「在宅で副収入」といった文言で、コロナ禍で収入源を求める消費者を狙った勧誘への対策が強化されています。
電子書面化への対応状況
令和3年改正により、書面交付の電子化が段階的に導入されています。これは、デジタル化の進展に対応し、事業者と消費者の利便性向上を図るものです。
- 対象範囲
- これまで紙媒体での交付が義務付けられていた概要書面・契約書面について、消費者の承諾を前提に電子化が認められるようになりました。
- これは事業者が選択できる任意制度であり、消費者が希望しない場合は紙媒体での交付が必要です。
- 技術的要件
- 電子書面は、改変防止措置(電子署名など)が施されている必要があります。
- 消費者が容易に出力・保存できる形式であること。
- 視認性が確保され、内容を十分に確認できる状態であることが求められます。
- 事業者対応状況
- 大手MLM企業では、消費者への同意取得やシステム改修を進め、順次導入を開始しています。
- 中小企業では、システム投資やコンプライアンス体制の整備が課題となっており、まだ準備段階の企業も多数存在します。
MLMビジネス運営の実務ポイント

合法的にMLMビジネスを運営し、消費者トラブルを防ぐためには、法令遵守を徹底した社内体制の構築と、日々の運用における細やかな注意が不可欠です。ここでは、事業者が実践すべき実務ポイントを解説します。事業者の方にも、消費者の方にも参考になる内容です。
合法的な事業運営のためのチェックリスト
トラブルを未然に防ぎ、健全なビジネスを維持するためには、以下のチェックリストを参考に、定期的に社内体制を確認・改善することが重要です。
- 組織体制の整備
- 統括者・勧誘者の役割分担明確化: 誰がどのような責任を持つのかを明確にし、責任の所在を明確にします。
- コンプライアンス責任者の設置: 法令遵守を統括する専門の担当者または部門を設置し、実効性のある体制を構築します。
- 定期的な法令研修の実施: 統括者、勧誘者、関連する全ての従業員に対し、特定商取引法の内容や最新の法改正、行政処分事例などを学ぶ研修を定期的に行います。
- 苦情処理体制の構築: 消費者からの苦情を迅速かつ適切に処理するための窓口(電話、メールなど)を設置し、担当者を明確にします。
- 勧誘活動の適正化
- 氏名等明示の徹底指導: 勧誘開始前に、事業者名、勧誘目的、商品種類などを明確に告げることを全ての勧誘者に徹底させます。
- 勧誘マニュアルの整備・更新: 法令に基づいた適切な勧誘方法を記載したマニュアルを作成し、定期的に内容を見直して最新の情報に更新します。
- 禁止行為に関する教育実施: 不実告知、威迫・困惑、誇大広告など、特定商取引法で禁止されている行為について、具体例を挙げて教育を行います。
- SNS勧誘ガイドラインの策定: SNSやマッチングアプリを用いた勧誘における、明確なルールや禁止事項を定めたガイドラインを作成し、周知徹底します。
- 書面管理の徹底
- 概要書面・契約書面の法定記載事項確認: 法令で定められた全ての必要事項が漏れなく記載されているか、定期的に確認します。
- 交付記録の適切な保管: いつ、誰に、どのような書面を交付したかの記録を正確に作成し、適切に保管します。
- 電子書面対応の準備: 電子書面化を進める場合は、消費者の同意取得方法、セキュリティ対策、閲覧・保存環境の提供など、技術的・運用的な準備を進めます。
- 定期的な書面内容の見直し: 法改正や事業内容の変更に合わせて、書面の内容を適切に見直します。
- 広告・宣伝の適正化
- 誇大広告の排除: 「必ず儲かる」「簡単に成功できる」といった不確実な表現や、虚偽の成功事例の掲載を厳しく禁止します。
- 収益事例の適切な表示: 収入例を提示する場合は、その条件(例:平均的な参加者の収入ではないこと、個人の努力によること)や、成功者の割合などを明確に記載します。
- 法定表示事項の完備: 広告に必要な事業者情報、商品情報などを漏れなく記載します。
- 第三者による広告チェック体制: 法務部門や外部の弁護士など、第三者の目で広告内容をチェックする体制を構築し、客観的な視点での適正性を確保します。
リスク回避のための社内体制構築
コンプライアンス違反のリスクを低減し、万が一トラブルが発生した場合にも適切に対応できるよう、以下の社内体制を構築することが重要です。
- リスク管理体制
- 法務部門の設置: 特定商取引法や関連法令に詳しい専門知識を持つ担当者を配置し、法的なリスク管理を行います。
- 外部専門家の活用: 弁護士や特定商取引法に詳しいコンサルタントと顧問契約を結び、法的な助言や指導を定期的に受けます。
- 内部監査制度: 定期的に社内の勧誘活動、書面管理、広告表示などが法令に遵守しているかを確認するための監査を実施します。
- リスクアセスメント: 潜在的な法令違反リスクを定期的に評価し、そのリスクを低減するための具体的な対策を講じます。
- 教育・研修制度
- 新人研修: 新たに連鎖販売業者となる者に対し、入会時に特定商取引法や社内ルールに関する法令教育を必須とします。
- 継続教育: 年次や月次で、全ての勧誘者に対し、最新の法改正情報、トラブル事例、正しい勧誘方法に関する継続的な研修を実施します。
- リーダー研修: 組織運営を担うリーダー層向けに、コンプライアンス体制の構築や、組織内の法令遵守を徹底させるための特別なプログラムを提供します。
- 事例研究: 過去の行政処分事例や消費者トラブル事例を基に、具体的な問題点と対応策を学ぶ実践的な学習を行います。
- モニタリング体制
- 勧誘活動の監視: 定期的に現場監査や、勧誘時の同席、録音の確認などを行い、勧誘活動が法令に則っているかを監視します。
- 苦情分析: 消費者からの苦情内容を詳細に分析し、苦情の傾向や原因を特定して、再発防止策に繋げます。
- SNS監視: 会員によるSNS投稿(商品紹介、収入報告など)を定期的に監視し、誇大広告や不適切な表現がないかをチェックします。
- 競合他社分析: 他社の勧誘方法や行政処分事例を分析し、業界全体の動向と規制環境を常に把握します。
トラブル発生時の対応手順
万が一トラブルが発生した場合でも、迅速かつ適切に対応することで、被害の拡大を防ぎ、企業の信頼性を守ることができます。
- 初期対応(24時間以内)
- 事実関係の迅速な把握: 苦情の内容や発生日時、関係者などを速やかに特定します。
- 関係者からのヒアリング実施: 当事者や関連する勧誘者、消費生活センターなどから詳細な聞き取りを行います。
- 証拠資料の収集・保全: 契約書、概要書面、広告、メール、LINEのやり取り、録音データなど、関連する全ての証拠を収集し、改ざんされないように保全します。
- 顧問弁護士への相談: 早期に顧問弁護士に相談し、法的なアドバイスを受けます。
- 調査・分析段階(1週間以内)
- 詳細な事実調査の実施: 初期対応で得られた情報をもとに、さらに深く事実関係を掘り下げます。
- 法令違反の有無確認: 収集した証拠と事実に基づき、特定商取引法やその他の法令に違反する行為があったかを確認します。
- 被害範囲の特定: 同様のトラブルが発生していないか、他に被害者がいないかなどを調査し、被害の全体像を把握します。
- 対応方針の決定: 調査結果に基づき、消費者への謝罪、返金、再発防止策など、具体的な対応方針を決定します。
- 対策実施段階
- 消費者への謝罪・救済措置: 被害者に対し、誠意をもって謝罪し、返金や契約解除などの適切な救済措置を実施します。
- 再発防止策の策定・実施: 同様のトラブルが二度と発生しないよう、勧誘マニュアルの見直し、研修の強化、監視体制の強化など、具体的な再発防止策を策定し、実施します。
- 行政機関への報告(必要に応じて): 消費者庁や経済産業省など、関係する行政機関への報告が必要な場合は、速やかに行います。
- 社内処分の検討・実施: 問題に関与した従業員や連鎖販売業者に対し、社内規定に基づいた適切な処分(指導、契約解除など)を検討し、実施します。
- フォローアップ
- 対策効果の検証: 実施した再発防止策が効果を発揮しているか、定期的に検証します。
- 制度・体制の見直し: トラブルから得られた教訓を活かし、社内制度やコンプライアンス体制を恒常的に見直します。
- 類似事案の予防策強化: 他のMLM企業で発生したトラブルなども参考に、自社で類似の事案が発生しないよう予防策を強化します。
- ステークホルダーへの報告: 必要に応じて、株主、取引先、業界団体などのステークホルダーに対し、トラブルの経緯と対応について適切に報告します。
消費者向け|MLMトラブルの予防と対処法

MLMは合法的なビジネス形態である一方で、特定商取引法による規制があるように、トラブルに巻き込まれるリスクも存在します。ここでは、消費者がトラブルを未然に防ぎ、万が一巻き込まれてしまった場合に適切に対処するための知識と方法を解説します。
勧誘を受けた際の判断基準
甘い誘い文句に安易に乗らず、冷静に判断することが重要です。以下のポイントに注意し、危険な勧誘を見抜きましょう。
- 危険な勧誘の特徴
- 「絶対に儲かる」「必ず成功する」といった断定的表現: どのようなビジネスにもリスクは存在します。断定的な言い回しは、実態と異なる可能性が高いです。
- 具体的な商品説明なしに「ビジネスの話」として接触: まず「会って話を聞いてほしい」と誘われ、詳細を明かさないまま「ビジネス」や「投資」といった曖昧な表現で誘うケースです。
- 高額な初期費用や商品購入を要求: 参加するために、不要な高額商品や大量の商品購入を求められる場合、目的がビジネスの開始ではなく商品販売にある可能性があります。
- 友人・知人関係を利用した執拗な勧誘: 友人や知人からの紹介で断りにくい状況を作り出し、何度も勧誘したり、断っても引き下がらないケースです。
- セミナーや説明会への参加を強要: 詳細を説明する前に、高額な参加費を伴うセミナーや大人数が集まる説明会への参加を執拗に勧めてくる場合があります。
- 適切な判断のポイント
- 商品価値の客観的評価: 提示された商品の価格が、市場価格と比較して適正か、本当にその価格に見合う価値があるのかを冷静に判断しましょう。また、実際に使用する価値があるのかも重要です。
- 収益構造の分析: どのような仕組みで収入が得られるのか、商品販売による収入と、新規勧誘による紹介料やボーナスとの割合を明確に理解しましょう。新規勧誘に過度に依存する構造は危険です。
- 事業者の信頼性確認: 会社の設立年数、経営状況、過去の行政処分歴(消費者庁のウェブサイトなどで確認可能)、業界団体への加盟状況などを確認し、信頼できる事業者かどうかを見極めましょう。
- 契約条件の詳細確認: クーリングオフの条件、中途解約の可否、返品・返金規定など、契約に関する重要な事項を契約書面や概要書面で細かく確認し、疑問点は解消してから契約しましょう。
契約してしまった場合の解決手順
万が一、MLMの契約をしてしまい、トラブルに巻き込まれたと感じたら、一人で悩まずに以下の手順で対処しましょう。
- クーリングオフの活用
- 期間の確認: 法定書面(概要書面と契約書面)を受け取ってから20日以内であれば、クーリングオフが可能です。期間を正確に確認しましょう。
- 書面作成: 契約を解除する旨と、支払い済みの金銭の返金要求、商品の引取りを求める旨を記載した書面を作成します。
- 送付方法: 証拠を残すため、必ず内容証明郵便で事業者に送付し、その控えを保管しておきましょう。電子メールで通知する場合も、送信記録(日時、内容)を保存してください。
- 記録保存: 送付記録だけでなく、相手方からの返答や対応についても、日付や内容を詳細に記録しておきましょう。
- 中途解約の検討
- クーリングオフ期間を過ぎてしまっても、契約から1年以内、商品引渡しから90日以内などの条件を満たせば、中途解約権を行使できる場合があります。契約書面で条件を再確認しましょう。
- 商品の使用状況(未使用・未開封であることなど)が条件となることが多いので、確認してください。
- 事業者との交渉を行う場合は、その交渉記録(日時、担当者名、会話内容)を必ず残しましょう。
- 法的手続きの準備
- 契約書類一式の整理: 契約書、概要書面、商品のパンフレットなど、関係する全ての書類を整理し、いつでも提示できるように準備します。
- 勧誘時の録音・メール等の証拠収集: 勧誘時の会話(録音がある場合)、やり取りしたメールやSNSのメッセージなど、違法な勧誘があったことを示す証拠をできる限り収集します。
- 支払い履歴の整理: 契約時に支払った金額、定期購入している商品の支払い履歴など、金銭の動きを整理します。
- 被害額の算定: 支払った総額から、未使用で返品可能な商品の価格などを差し引き、具体的な被害額を算定します。
相談窓口と支援制度の活用
一人で抱え込まず、公的な相談窓口や専門家を頼ることが問題解決への第一歩です。
- 公的相談窓口
- 消費生活センター(電話番号:188番): 最寄りの消費生活センターに自動で接続される全国共通のホットラインです。まずはここに相談することをおすすめします。
- 消費者庁消費者ホットライン: 全国共通の相談窓口で、MLMに関する情報提供や相談に乗ってくれます。
- 国民生活センター: 消費生活センターからの専門的な相談や、集団的な被害に関する情報集約を行っています。
- 都道府県の消費生活相談窓口: 各自治体が設置している消費生活相談窓口でも、地域に根ざした対応をしてくれます。
- 民間支援組織
- 消費者被害弁護士団: MLM被害に詳しい弁護士グループが、専門的な法的支援や集団訴訟の相談に応じてくれます。
- 適格消費者団体: 特定商取引法に違反する事業者に対して、消費者被害の差し止め請求を行うことができる団体です。集団被害の場合に有効です。
- NPO法人: 消費者被害者支援を行うNPO法人の中には、カウンセリングや情報提供を行う団体もあります。
- 相談時の準備事項
- 契約関係書類の準備: 相談時には、契約書、概要書面、商品の情報、領収書など、関連する書類を全て持参しましょう。
- 勧誘から契約までの経緯整理: いつ、どこで、誰に、どのように勧誘されたか、どのような説明があったかなどを時系列で具体的にメモにまとめておくとスムーズです。
- 支払い状況の把握: 支払った金額、支払い方法(現金、クレジットカード、ローンなど)を正確に伝えられるように準備しましょう。
- 希望する解決方法の明確化: 契約解除、返金、損害賠償など、自分がどのような解決を望んでいるかを明確にして相談に臨みましょう。
- 集団被害への対応
- 同様被害者との情報共有: インターネットの掲示板やSNSなどで、同じ事業者による被害者がいないか情報を共有し、連携を検討することも有効です。
- 適格消費者団体への相談: 集団的な被害の場合、適格消費者団体が事業者に対して差し止め請求を行うことで、被害の拡大を防げる可能性があります。
- 集団訴訟制度の活用検討: 被害者が多数に上る場合、弁護士と相談し、集団訴訟制度の活用を検討することも選択肢の一つです。
- 行政処分申出制度の利用: 違法行為を行っている事業者に対して、消費者庁などに行政処分の申出を行うこともできます。
よくある質問(FAQ)

この記事では、MLM(マルチレベルマーケティング)と特定商取引法について詳しく解説しました。ここでは、読者の皆様が抱きやすい疑問点について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。
Q1: MLM(マルチレベルマーケティング)とは何ですか?また、法的にはどのように定義されていますか?
A1: MLMは「Multi-Level Marketing」の略で、商品の販売やサービスの提供を行いながら、新たな販売員を勧誘し、その販売実績に応じて報酬を得る多段階の販売組織を指します。 特定商取引法では「連鎖販売取引」と定義され、以下の4つの要件を満たす事業が規制対象となります。
- 物品の販売等の事業であること
- 再販売等を行う者を対象とすること
- 特定利益(利益が得られること)を誘引して勧誘すること
- 特定負担(1円以上の金銭負担)があること
Q2: MLMと「ねずみ講」は同じものですか?どうやって見分けられますか?
A2: MLM(連鎖販売取引)と「ねずみ講」(無限連鎖講)は、法律上全く異なるものです。 最も大きな違いは「商品価値の有無」です。
- MLM(連鎖販売取引):実際に価値のある商品やサービスの販売が主目的であり、販売活動によって正当な利益を得ることが可能です。特定商取引法で厳しく規制されており、合法的に運営できます。
- ねずみ講(無限連鎖講):金品の受け渡しが主目的であり、商品があってもその価値が価格と大きくかけ離れているのが特徴です。新規会員の勧誘による金銭の分配が主な収入源であり、無限連鎖講防止法により全面的に禁止されている違法な行為です。
見分けるポイントとしては、商品の実質的価値、収益構造(商品販売と勧誘収入のバランス)、新規勧誘に依存しない継続可能性、社会的有用性などを確認することが重要です。
Q3: MLM事業者は、特定商取引法でどのような規制を受けるのですか?
A3: MLM事業者は、消費者保護のために特定商取引法によって多くの厳格な規制を受けます。主な規制内容は以下の通りです。
- 氏名等明示義務:勧誘に先立ち、事業者の氏名・名称、勧誘目的、商品・役務の種類を明確に伝える義務。
- 禁止される勧誘行為:虚偽の説明(不実告知)、重要な事実を告げないこと(重要事実不告知)、消費者を威圧・困惑させる行為などが禁止されています。
- 広告表示に関する規制:誇大広告や誤認を招く表示の禁止、必要事項の記載義務があります。
- 書面交付義務:契約前に「概要書面」、契約後に「契約書面」を消費者に交付する義務があります。
- 電子メール広告の規制:原則として、消費者の事前承諾(オプトイン)なしに広告メールを送信することは禁止されています。
Q4: 「目隠し商法」とは何ですか?なぜ禁止されているのですか?
A4: 「目隠し商法」とは、勧誘目的を告げずに「ビジネスの話がある」「良い話がある」などと曖昧な表現で消費者を呼び出し、後から連鎖販売取引の勧誘を行う手法です。 これは、特定商取引法で定められている「氏名等明示義務」に違反するため禁止されています。消費者が勧誘を受ける前に、どのような取引の勧誘を受けるのかを明確に知る権利を保護するために、この義務が課せられています。
Q5: MLMの契約をしてしまった場合、キャンセルできますか?「クーリングオフ」とは何ですか?
A5: はい、一定の条件を満たせばキャンセル(契約解除)が可能です。 「クーリングオフ」は、特定商取引法で定められた消費者保護制度の一つです。連鎖販売取引の場合、法定書面(概要書面と契約書面)を受け取った日、または商品の引渡しを受けた日のいずれか遅い方から20日間以内であれば、消費者は無条件で契約を解除し、支払った金銭の返還や商品の引取りを求めることができます。 クーリングオフ期間が過ぎた場合でも、入会後1年以内かつ商品引渡しから90日以内などの条件を満たせば、「中途解約・返品ルール」を活用して契約解除や商品の返品ができる場合があります。
Q6: MLMに関するトラブルに巻き込まれたと感じたら、どうすれば良いですか?
A6: 一人で悩まず、速やかに専門機関に相談することが重要です。
- 公的相談窓口:
- 消費生活センター(電話番号:188番):全国共通の相談窓口で、最寄りのセンターに接続されます。まずはここに相談することをおすすめします。
- 消費者庁消費者ホットライン、国民生活センターなども利用できます。
- 民間支援組織:消費者被害弁護士団や適格消費者団体など、MLM被害に詳しい弁護士グループや消費者団体も存在します。
相談する際は、契約書、概要書面、商品の情報、勧誘時のやり取りの記録(メール、LINE、録音など)、支払い履歴など、関連する資料をできるだけ準備しておくとスムーズです。
Q7: すべてのMLMビジネスは違法なのですか?
A7: いいえ、すべてのMLMビジネスが違法ではありません。特定商取引法で厳しく規制されているものの、その規制を遵守し、合法的に運営されているMLM企業も存在します。 違法となるのは、前述の「ねずみ講」のように金品の受け渡しが主目的である場合や、特定商取引法で禁止されている勧誘行為(不実告知、目隠し勧誘など)を行った場合です。重要なのは、そのビジネスが法規制を遵守しているか、そして提供される商品やサービスに実質的な価値があるかを見極めることです。
よくある質問(FAQ)
MLMは「Multi-Level Marketing」の略で、商品の販売やサービスの提供を行いながら、新たな販売員を勧誘し、その販売実績に応じて多段階の報酬を得るマーケティング手法です。
特定商取引法における「連鎖販売取引」の4要件
- 物品の販売等の事業:商品や役務(サービス)の販売・提供を行う事業
- 再販売等の条件:再販売、受託販売、販売あっせんを行う者を対象とする
- 特定利益の誘引:「利益が得られる」として勧誘する
- 特定負担の存在:1円以上の金銭負担がある
MLM(連鎖販売取引)と「ねずみ講」(無限連鎖講)は法律上全く異なるものです。
MLM(合法)の特徴
- 実際に価値のある商品・サービスの販売が主目的
- 商品価格が市場価格と大きく乖離していない
- 特定商取引法で厳格に規制されながらも合法運営可能
- 新規勧誘がなくても事業継続可能な構造
ねずみ講(違法)の特徴
- 金品の受け渡しが主目的
- 商品がない、または価値と価格が大きく乖離
- 無限連鎖講防止法により全面禁止
- 必然的に破綻する構造
「目隠し商法」とは、勧誘目的を告げずに「ビジネスの話がある」「良い話がある」などと曖昧な表現で消費者を呼び出し、後からMLMの勧誘を行う手法です。
禁止される理由
- 特定商取引法の「氏名等明示義務」に違反
- 消費者の判断する権利を奪う行為
- 勧誘を受ける前に取引内容を知る権利の侵害
最近多発している手口
- SNSやマッチングアプリを利用した接触
- 「副業の話」「投資の話」として誘い出す
- カフェや密室での突然の勧誘
MLMにおけるクーリングオフは、消費者が冷静に判断し直すための重要な保護制度です。
クーリングオフの条件
- 期間:法定書面受領日から20日間
- 対象:無店舗個人(個人消費者)
- 方法:書面または電子メールによる通知
- 効果:無条件での契約解除と代金返還
手続きのポイント
- 内容証明郵便での通知を推奨
- 商品の引取り費用は事業者負担
- 損害賠償や違約金の支払い不要
はい、中途解約・返品ルールを活用することで、一定条件下で契約解除や商品返品が可能です。
中途解約の条件
- 入会後1年以内であること
- 商品引渡しから90日以内であること
- 商品を再販売していないこと
- 商品を使用・消費していないこと
- 自己責任による滅失・毀損がないこと
取消権の活用
事業者の法律違反(虚偽説明、重要事実不告知)があった場合は、誤認に気づいてから1年間(契約から5年以内)は取消権を行使できます。
MLM事業者には、消費者保護のために特定商取引法により多くの義務が課せられています。
主な義務
- 氏名等明示義務:勧誘前に事業者名、勧誘目的、商品種類の明示
- 書面交付義務:概要書面(契約前)と契約書面(契約後)の交付
- 禁止行為の遵守:虚偽説明、威迫・困惑行為の禁止
- 広告規制:誇大広告の禁止、必要事項の記載
- メール規制:オプトイン(事前承諾)なしの広告メール送信禁止
違反時の罰則
- 業務改善指示・業務停止命令
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
甘い誘い文句に惑わされず、冷静に判断することが重要です。
危険な勧誘の特徴
- 「絶対に儲かる」「必ず成功する」といった断定的表現
- 具体的な商品説明なしに「ビジネスの話」として接触
- 高額な初期費用や商品購入の要求
- 友人・知人関係を利用した執拗な勧誘
- セミナーや説明会への参加強要
適切な判断のポイント
- 商品価値の客観的評価(市場価格との比較)
- 収益構造の分析(商品販売vs勧誘収入のバランス)
- 事業者の信頼性確認(設立年数、行政処分歴など)
- 契約条件の詳細確認(クーリングオフ、解約条件など)
いいえ、すべてのMLMビジネスが違法ではありません。特定商取引法の規制を遵守し、合法的に運営されているMLM企業も存在します。
合法なMLMの条件
- 実質的価値のある商品・サービスの提供
- 適正な価格設定(市場価格との整合性)
- 特定商取引法の完全遵守
- 透明性の高い報酬体系
- 適切な消費者保護制度の整備
違法となるケース
- ねずみ講のように金品受け渡しが主目的
- 不実告知や目隠し勧誘などの禁止行為
- 商品価値と価格の著しい乖離
- 法定書面の交付義務違反
令和3年(2021年)の特定商取引法改正により、MLM規制も強化されています。
主な改正ポイント
- 書面の電子化:消費者同意を前提とした電子書面の導入
- 法執行強化:行政処分の公表制度充実
- 被害防止:適格消費者団体による差止請求権拡大
近年の処分傾向
- SNS・マッチングアプリを利用した目隠し勧誘への厳格対応
- 健康食品・化粧品の効果効能誇大広告への処分強化
- コロナ禍の在宅ワーク需要を悪用した勧誘への対策
一人で悩まず、速やかに専門機関に相談することが重要です。
公的相談窓口
- 消費生活センター:188番(全国共通ホットライン)
- 消費者庁消費者ホットライン:情報提供・相談対応
- 国民生活センター:専門的相談・情報集約
- 都道府県の消費生活相談窓口:地域密着型対応
民間支援組織
- 消費者被害弁護士団:法的支援・集団訴訟相談
- 適格消費者団体:差し止め請求による被害防止
- 消費者支援NPO:カウンセリング・情報提供
まとめ
MLMと特定商取引法の関係は複雑で、適切な理解と対応が不可欠です。事業者にとっては厳格な法令遵守が事業継続の前提であり、消費者にとっては自己防衛の知識が被害防止につながります。
事業者の皆様へ
- 法令遵守は単なるコストではなく、長期的な事業発展の基盤となります。法を守り、信頼される企業であることが、持続的な成長に繋がります。
- 消費者保護を徹底することが、顧客からの信頼獲得と事業拡大に繋がります。消費者目線でのビジネス運営を心がけましょう。
- 継続的な法改正への対応と社内体制の整備が重要です。常に最新の情報をキャッチアップし、適宜社内ルールや研修内容を見直す必要があります。
消費者の皆様へ
- 「必ず儲かる」「簡単に稼げる」といった甘い誘いには十分な警戒が必要です。リスクやデメリットもしっかり確認し、冷静に判断しましょう。
- 契約前の十分な検討と情報収集が被害防止の鍵です。疑問点は解消し、納得した上で契約するようにしましょう。
- トラブル時は一人で悩まず、消費生活センターなどの専門機関への相談を躊躇しないでください。早期の相談が問題解決につながります。
MLMビジネスは適切に運営されれば有益な販売手法の一つですが、法律を無視した運営は必ず破綻します。本記事の情報を参考に、健全で持続可能なビジネス環境の構築と、消費者被害の防止に努めていただければと思います。
参考文献・関連法令
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